
茅葺きの家に移り住む! しかし、うまくいかない例もあった。「とにかく茅葺きの家に住みたい」の一念で秋田県の山間の地に家族で移り住んだBさん。妻の猛反対を押し切っての移住だった。 「横浜で毎晩ケンカ腰で意見を交わしました。妻の反対理由は子どもの教育。これ一本。『あんたはいい。でも、子どもはどうするの』の繰り返しで」。 結局、3年間、自然の中で逞しく育ててみようという期限付きでなんとか妻の承諾を得たBさんは、森林組合に仕事を見つけ、Uターンしたのはいいのだが。議論に熱中したあまり、現地情報の収集が不十分だった。 なにしろ日本有数の豪雪地。下見に訪れたのは最も快適な季節、7月。移り住んだ10月には、早くもチラチラと雪が舞い始めていた。地元の人たちの助言で冬支度をしたつもりだったが、使い方が悪いのか燃料の薪が年末には底を尽きかけた。折しも吹雪で電話が不通に。隣の家は林の向こう。雪がなければ10分程度の道のりだが、何度挑戦しても5、6メートルはあろう雪の壁に阻まれて行き着けない。雪が屋根に降り積もり、柱が軋む。慣れぬ雪下ろしをしたところで、「振り返るとあきれるほど降り積もっている」(Bさん)状況でついに腰を傷め、動けなくなってしまう。まさに一家まるごと遭難状態に陥ったBさん家は、隣家の「救出」でなんとか窮地を脱した、吹雪の止んだ早朝、玄関先に現れた隣人の姿に「後光が射してみえた」という。もっとも、その隣人曰く、「どうせ、こんなことだろうと思ったけどね」(注・この発言は方言の翻訳です)。 もちろんBさん一家は春になるや、ほうほうの態で東京に戻った。妻に散々お灸をすえられたBさんは、戻った直後の電話で一言。「目が覚めました、はい」。 新幹線車中で夫婦大激論 ちょっと例が極端過ぎやしないか、と思われる方も多いだろう。そこで、かなり一般的な事例を一つ。 女性の高学歴化が進む。当然、夫婦大卒の家族は増える。横浜の大手電気メーカーで営業マンをしていたCさんのUターンを紹介しよう。妻のD子さんは大卒入社の同期生。出産を機に退職した。子育てをしながら育児サークルや地域活動、趣味にと幅広い活動を続ける典型的な「元気ママ」だ。 ある日、Cさんが某就職情報誌(「日経YOU TURN」でないのが実にくやしい!)の求人広告に目をとめたことから話は始まる。 Uターン先は妻の実家のある中国地方の某アパレルメーカー。職種も異なり、30代半ばのCさんにとって不安材料は少なくない。しかし、社長のコメントがとても温かみにあふれ、彼はかなり乗り気になった。 「月並みな言い方だけど、大企業の歯車として生きるよりも、もっと充実した、手応えのある人生を送りたいとずっと考えていたのです。幸い、当地には妻の実家もあり、なにかと安心だと思
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